失恋内服薬

大人のオンナが心の傷を癒していくには?

『 風立ちぬ』

 一日が映画の日だったので、急遽、お休みを取ったものの、暑さに挫折してレンタルDVDに流れる。5本で1000円なら、映画よりお得かな。まず第一に見たのが

 

風立ちぬ [DVD]

風立ちぬ [DVD]

 

  少年の夢の中でのやり取りとか、飛行機の飛ぶシーンがジブリっぽくて素敵だ。『 ハウルの動く城』の戦闘シーンを髣髴とさせてわくわくする。

 でも、この話は戦前の日本の実在の人物をモデルにしていて、彼がその夢を実現させたばかりに、空軍はゼロ戦の威力を過信し、多くの人々が犠牲になる。

 開発している時の彼の姿勢もワーカホリック的で、病気の妻が命がけで傍にいようとするのに、自分は仕事を最優先させている。( 喘息の人の横で煙草を吸うな!)これが戦前の日本の男の価値観なのかなぁ。二人の交流は美しく描かれていて、切なくて素敵だけど…。

 高校生の息子は既に見ていたらしく「 ジブリにしては、何だかよく解らなかった」と言っていたが、確かに子どもには分かるまい。

 これは、大人のオトコのロマンを水彩画のように灰汁を抜いて、上澄みだけを美しく描いた物語だ。酔うのもいいし、眉をひそめるのも勝手。

 その開発のために何千何万という人が犠牲になろうとも、社会の構造の矛盾を目の当たりにしようとも、愛する妻が病で死のうとも、「 夢」は実現させない訳にはゆかない。文字通り、心血を注いで打ち込む。

 主人公の堀越の声が、淡々として抑揚がないのは、上澄み的な演出が効いているように感じていたが、こうして考えてみると、心は注がれて「 夢」の中にあるからなのかもしれない。