失恋内服薬

大人のオンナが心の傷を癒していくには?

背中に残る温かさ

 ホットペッパービューティ―とかにも登録していないばかりか、看板すらも出してない、その美容院はビルの3階にあるので、通りがかりの人がフラッと入るわけでもない。ここ10年近く、どうやって経営していたのだろうか?と他人事ながら心配にもなるが、金曜日に電話しても日曜日の予約が取れるところが嬉しい。

 しかも私の頭の形から髪のくせまで、しっかりカルテに記録してくれて把握しているばかりか「 朝まとめやすく、お洒落で…」などと、曖昧な注文にも上手に対応してくれる腕の良さが魅力だ。引っ越してからも、電車を乗り継いで行く価値のある隠れ家的な美容院だ。

 今日は私が「 内巻きにパーマをかけたい」と言うと、「 まだ、半年前のパーマが残っているからモッタイナイ。大学の入学式があるなら、直前の3月にかけた方がいい」と商売っ気のないことを言う。

 シャンプーでのヘッドマッサージも丁寧で、ブローの後の肩揉みにも労わりを感じる。私よりちょっと年上だけど、子育ての話や私の元夫からの養育費云々とか、忌憚ない話ができるので、働くオンナとしての同志感を感じるからかもしれない。

 今日は最後に、背中の、ちょうど肩甲骨の間の辺りをそっと撫でられた時に、そのさり気ない温かさにぐっと来た。彼女のお客に向かう姿勢の温かさが、師走の町を風邪気味で帰る私の気持ちを温め続けてくれた。